【冬のタイヤの熱入れ/公道・タイヤウォーマー】初心者を脱却!ライディング講座㉔

24回テーマ【冬のタイヤの熱入れ】

おはレーニア。えびです。

そろそろ冬本番のTwitter峠。毎年恒例の話題として「冬はタイヤが滑る」というお話。低下する気温と路面温度。そして強張るライダーの身体。それに加えてタイヤが冷えて本来のグリップを発揮しない。それはそれは不安な仔羊ちゃんが多い事でしょう。

今回は「冬のタイヤの熱入れ」のお話。「知ってる知ってる、熱が入るまで気を付けて走るべよ」って方。その熱入れの方法が正しいのか、何故そのような熱入れ方法となるのか、本格的に寒くなる前にもう一度だけ考えてみませんか?

だって、君ら散るやん。

※タイヤがグリップするという言葉を使いたくないですが、分かり易い為、使っています。

※本ブログの収益はマウントレーニアの養分と恵まれないTwitter峠の子羊ちゃんのサーキット道具費用となります。

前置き➡【目線はコーナーの奥に】初心者を脱却!ライディング講座①

前回➡【身体は自由には動かない】初心者を脱却!ライディング講座㉓

関連記事①➡【タイヤの空気圧】初心者を脱却!ライディング講座⑱

関連記事②➡えびの製品レビュー/インプレ【ブリヂストン BATTLAX HYPERSPORT S22】


㉔-1:タイヤのお熱のお話

皆さん履いているタイヤには「適正温度」というものが存在します。つまり、最適なパフォーマンス、最適なグリップを発揮する温度帯の事です。タイヤと一言で言ってもツーリングタイヤからプロダクションタイヤまで様々ですが、全てにおいて言える事は「冷えたタイヤが適正温度」というタイヤは存在しません(したらゴメン)。

最近のストリート用タイヤは温度依存性が低く、冷間時から性能を発揮してくれますが、それでも走り初めは気を使います。プロダクションタイヤは季節関係なく、シビアな温度管理が必要です。過昇温させてもタイヤの熱ダレの原因となります。

本来、タイヤの温度管理はプロダクションタイヤだけではなく、ストリートタイヤも季節関係なく考えておかなければならない事です。それでも「冬はタイヤが冷えるから」と季節限定のように言われてしまいますね。

冬はタイヤの表面温度が高くても、走行中の冷たい風でタイヤの表面温度は下がってしまいます。その一方でタイヤの中身は皆さんご存知の空気が入っています。空気は熱伝導率が低い為、一度昇温されると冷めにくく、適正温度を長く保持する事が出来ます。タイヤが昇温する事により、内部の空気が保温材のような役割になる訳です。

「冬はタイヤが温まりにくい」という事も事実ですが、どちらかというと「タイヤが冷めやすい」と言う方が正しいでしょう。外気温が高い季節であれば、昇温したタイヤが冷めにくい為、走っているだけで温度が保持されます。

冬の走りは表面上ではなく、早く内部まで熱を入れて、タイヤの適正温度を長く保てるように意識をします。事項ではタイヤの熱入れ原理と方法について。


㉔-2:熱入れの原理と方法

タイヤの熱入れ方法について、何となくで理解している方は多いと思いますが、整理していきましょう。まず、タイヤに熱を入れる方法としては大きく分けて3つ。

  1. アドヒージョン(摩擦抵抗)
  2. ヒステリシスロス(履歴損失)
  3. 外的加熱(タイヤウォーマー等)

~ ① アドヒージョン(摩擦抵抗) ~

タイヤの転がり抵抗
https://clicccar.com/2021/03/10/1063298/

アドヒージョン、簡単に言うと摩擦抵抗によって発熱する、摩擦熱と呼ばれる原理です。なぜ、あえてアドヒージョンという言葉を選んだのか?キチンと理由があります。横文字がカッコイイという日本人の典型的な例です。

冬場寒いと手を擦り合わせて温めてる人を良く見ますよね。実際にやってみると確かに発熱します。路面とタイヤの間も同じような現象が起きており、摩擦熱が発生しています。

しかし、賢明なレーニアフレンズは理解していると思いますが、あくまでも表面上の発熱です。手を擦り合わせても、数秒間空気に晒すだけで直ぐに冷めてしまいますね。そして、前項のようにタイヤの表面上の発熱は直ぐに冷めてしまいます。

表面上の発熱が意味がないという訳ではなく、ただ走っているだけでは表面上の発熱しか確保出来ていないと理解しておきましょう。

未だにたまーにいます。スラロームしてタイヤの熱入れを行っているつもりの人。冬の初動でやると、だ君散。賢いレーニアフレンズは勿論、ご存知かと思いますがタイヤは潰して揉んであげる事で発熱します。詳しくは以下。


~ ② ヒステリシスロス(履歴損失) ~

「転がり抵抗」の正体
http://morimotty.com/tire-rolling-resistance-impedance/

こちらはあまり聞き馴染みがない言葉かと思います。タイヤの主成分は皆さんご存知のゴムです。NR、SBR、BRと様々ありますが、ここではゴムの基本的な特性の為、ゴムで統一させてもらいます。

ヒステリシスロスとはゴム等の粘弾性物体が持つ特性です。皆さん、タイヤ以外でもボール等のゴム材に触れた事はあるかと思います。ゴムには変形すると元に戻ろうとする弾性という特性があります。ゴムボールを潰すと元に戻りますね。 しかし、弾性があれど完全に元に戻ることはなく、”100″の力で潰れた場合には“80”の力で元に戻ろうとします。残りの“20”はどこに行ったのか、“100”で潰した早さに比べて、”80″で戻ろうとする早さの方が遅いと言うことは感覚で理解できますね?。残りの“20”はその遅れて生じる変形エネルギーに変換されます。※だいぶ簡略化したらね。

エネルギーの履歴(“100″➡”80”)の中で保持出来ずに損失されたエネルギー(“20”)、それが熱に代わる現象がヒステリシスロス(履歴損失)です。

簡単に言うと、タイヤの変形時に生じるエネルギーロスの事ですね。そのエネルギーが発熱しますので、タイヤを潰して変形させ続ける事でタイヤ内部に熱を入れる事が可能となります。

さて、原理はこの辺りで終わり。先ほどの摩擦熱が手のひらをすり合わせているとしたら、ヒステリシスロスは運動して身体全体で発熱している状況です。体内が温まっていると、なかなか冷えませんよね。タイヤも表面(皮膚)の温度は直ぐに冷めてしまいますが、内部の空気(体内)はなかなか冷えません。

ヒステリシスロスはストリートでも、サーキットでも大事な原理です。タイヤが潰れ、元に戻ろうとする力で熱が発生する為、積極的に潰していきましょう。基本的にリアタイヤはアクセルを開けて荷重をかけ、フロントタイヤはブレーキをかけて荷重をかける

ストリートでは無理がない範囲で、ストップ&ゴーで意識して揉むように潰していきましょう。信号待ちの際に長くフロントブレーキをかける、走行中に高いギアで大きくアクセルを開ける等々、タイムを競っている訳ではないので、あくまでも自分のペースで熱入れを行っていくと、タイヤの接地感が増して安定していくかと思います。

サーキット走行でタイヤウォーマーを所持していない場合には一周目から全開走行は難しいと思います。その際立ち上がりを早くし、ストレートの全開区間を長くとり、ブレーキも普段より長く確保してあげる事で、ストレートとブレーキングでタイヤの熱入れを行う事が出来ます。そもそも、一週目は各所ブレーキ等のチェックも兼ねているかと思いますので、それ+αでタイヤの揉みつぶしも意識しましょう。


~ ③ 外的加熱(タイヤウォーマー等) ~

サーキット走行を行う方々にはお馴染みタイヤウォーマー。タイヤに巻いて電気で加熱させて、走行前からタイヤを高温に維持することができる、今や必需品として皆様使っているかと思います。

タイヤウォーマーを使用する事が最適な様な気がしますが、勿論注意事項はあります

一つは何もしなければタイヤは冷えるという事です。「ウォーマーをかけているから安心」という訳ではありません。ピットで昇温させた後にコースインしても、冷たい風が当たるとタイヤは冷えていきます。特に一週目はどうしてもペースは遅め。そうなると昇温させたタイヤが冷えて、ペースを上げた二週目に転倒!!、プロのレースでも見ますね。

タイヤウォーマーをかけていても、基本的には一週目はしっかりとタイヤを揉んでチェックを行いましょう。タイヤに限らず、ブレーキも身体もバイク全体のチェックをサーキット走行ペースで(【サーキットのトラブル】速い人?遅い人?どちらが優先??)。それでも一週目は詰まってくるかと思いますが、コーナーで普段より多めにブレーキを引きずって進入したり、立ち上がりを早めにしたり、工夫しながらタイヤを揉む事は出来ます。

前項や【タイヤの空気圧】初心者を脱却!ライディング講座⑱でも触れたようにプロダクションタイヤで最適なパフォーマンスを発揮するにはシビアなコントロールが必要です。タイヤウォーマーと一言で言っても沢山の製品があり、実際にどの程度昇温しているのか確認することは難しいでしょう。過昇温となるとタイヤの熱ダレの原因にもなり、温度が上がり切れない場合には性能不足に陥ります。一つの指標として、タイヤではなくホイールが温まっている事を確認しましょう。タイヤ表面ではなく、タイヤ内部まで昇温されている事が確認できます。

安全の為にも、走り分析の為にもデータとして見える化を図るように任意の温度設定が出来るウォーマー温度チェッカーを使用することもお勧め致します(私が買えるとは言っていない)。

また、タイヤウォーマーを使用する際にサーキット設備電源(コンセント)を使用するのであれば問題はないかと思いますが、発電機を使用する際には注意が必要です。特に発電量が足りない発電機や、電圧が安定しない古い発電機の使用は控えましょう。また、一台の発電機で2台分のウォーマーをかけたり、無駄にタコ足や分岐させることもNGです。

結果的に電力不足となるのがタイヤウォーマーに一番良くない環境となります。電力不足となると昇温しにくくなるのではなく、少ない電力で昇温させようとする為、過負荷となりタイヤウォーマーの断線、ショートの原因にもなります。

その辺りはご使用のタイヤウォーマーの取扱説明書や購入元に確認後、最適な環境で使用しましょう。


㉔-3:まとめ

昨今のストリートタイヤは凄く良くできておりますね。真冬の夜でもある程度気を付けていれば、初動で転倒することはないかと思います。

それでも冬に限らずタイヤの熱入れについては、バイクに乗る上で常に気にかけていて損はないかと思います。タイヤがどのような状況であるのか、どのような走りを行えばタイヤがついて来るのか。

タイヤが滑って転倒しました?

タイヤが冷えてて転倒しました?

ノンノン、ただ下手くそなだけ。


【ホットマウントレーニア】

  1. お気に入りマグにレーニアを注ぐ
  2. レンチン(600W 50sec / 500W 60sec)
  3. お気に入りシーンで飲む
  4. 世界征服

※森永の美味しい牛乳で割るとよりマイルドに。

えびを

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